「野球今昔」

田中野球ユニット 田中 英登     
(横浜国立大学教育人間科学部教授、医博 スポーツ医学、
硬式野球部監督)

私の少年時代はテレビにおけるスポーツ中継といえば「プロ野球」がほとんどで、その他「大相撲」「プロレス」以外はあまり日常的にスポーツ番組を観る機会がなかった。1年という単位で「サッカーの天皇杯」「ラグビー大学選手権」「マラソン」「駅伝」などを観、さらに4年に一度の「オリンピック」で普段あまり観たことのないスポーツに携わる。そんな時代であった。しかし、時代は変わり、Jリーグ発足以降徐々に「サッカー」の人気も高まり、いわゆる「野球離れ」の現象が生じている。

私は私の幼少時代のように野球ばかりがスポーツではないことは百も承知である。昔のスポーツ=野球という古典的状況は日本の様々なスポーツの発展の妨げになっていたことも良く分かっている。しかし、ふと最近感じることがある。「大学の授業で野球のキャッチボールができない子が多い!」。20年前はほとんどの男子学生は「ハイッ、キャッチボール始めて!」と声をかけるだけで、楽しくキャッチボールができたものであった。しかし、最近では「ボールを顔面に受けたり。バットの持ち方が逆であったり。」という子が増えてきている。文部科学省の体力テストの報告を見ると、小学生のソフトボール投げの記録は昭和54年以降年々低下していることが明らかである。低年齢化した受験戦争に巻き込まれた運動習慣の減少による総合的な体力の低下だけがこの結果をもたらしているのであろうか?小学校の先生も正しくボールを投げることができない児童が増えていると嘆いている。

私はこのような時代だからこそ、このYNUS野球ユニットを通じて、地域の1人でも多くの子どもたちに「野球の楽しさ」を感じてもらいたいと願っている。私自身、小学時代から大学時代まで野球に携わり、多くの方からのご指導を受けてきた。大学卒業後、野球を離れ、身体運動科学の研究を続け、平成2年より横浜国立大学に着任した。その後、硬式野球部員及び野球部OB会の熱いお誘いをいただき、平成8年より大学硬式野球部の助監督として再び野球に関わることができた。YNUSでは、これまでの野球を通じて受けた多くの感謝を少しでもお返しできたらと願うものである。